じじいが集いてヘヴィメタる!『ジジメタルジャケット(泉昌之)』感想
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漫画はギャップがあればあるほど面白い。そういうわけで今回紹介するのは、ご近所のじいさん連中がメタルバンドを組んだという作品『ジジメタルジャケット』だ。じいちゃんといえば縁側で日向ぼっこ、庭で土いじり、散歩にゲートボール程度の認識でいた人々は考えを改めるべきである。おじーちゃん、というのんびりした響きにメタルは似合いそうにないが、意外とアリかもしれない…と考えさせてくれる。
そもそもバンドをテーマにしたギャグ漫画なので、当然のように音楽ネタが出てくる。そっち方面にそれほど明るくない私でも戸惑うことなく読めたので、日々の生活に笑いが欲しいというだけの人が読んでも問題はない。でも、洋楽ネタがわかるともっと面白いんだろうな。
ジジメタル・ジャケットの主な登場人物は4人。ボーカルの吉田屋さん、ギターの徳さん、ベースの大野さん、そしてドラムの棟梁(大工だから)だ。
朝っぱらから耳をつんざく様な大音量でギターをかき鳴らすじいちゃん、遅れてきた反抗期(ロック)がやってきたじいちゃん、トンデモ改造ギターを作るじいちゃん、ガッツリメイク&UWFのロゴ入りヘビ皮の地下足袋着用のじいちゃん、と「こんなじじい、いるのか!?」というようなじい様方がそろってます。
もしかしたらバンドを組んでた人にはあるあるネタが満載なのでしょうか。酒屋の倉庫(大野さん宅)での練習風景や、バンドの方向性をめぐって言い争いになる場面など、自分を重ね合わせてしまうところがあるのかもしれない*1。
ケンカのあとは銭湯で仲直り、というのもいかにもじいさんらしくて良い。風呂につかってポケーっとしたら、ある程度のことはどうでも良くなっちゃうもんね。
棟梁の夢は大工ならでは。ちなみに、仕事場でもこのスタイルのようです。
財力(年金&ローン)にものを言わせて、アンプも買っちゃう徳さん。「おじいちゃんなんなのこれ!」と息子嫁に怒られるまでがセットです。
個性的なギターの改造をもくろむ吉田屋さん。おじいちゃんになっても中二心というのはふとした瞬間に顔を出すのかもしれない。
バンドマンらしくない、と髪形に悩む大野さん。方向性がやっぱりじいちゃんだ。
コピーバンドとして活動してきた彼らだが、オリジナルの曲を作成しライブをやろうじゃないか、と話が転がりだす。
こちらは吉田屋さんの元に届いた、「音符が読めなくてジャズが怖かったんだ!」と告白した徳さんの書いた譜面。ト音記号の存在意義が気になるところだが、メタルじじいにはそんなものはどうでもいい。
この曲に書いたという詞が凄まじいので引用してみる。
地獄の賛美歌 詞・曲/徳次郎
貴方は今宵の月を見たか ベービ
貴方は今宵の月を見たか ベービ ファッキンレットだ
血の色だ 地獄の女王はツナイト塩梅が悪い
何処そこの誰か何のタレ兵衛が いけにえになるのだツナイト
だからダンシン どうたらこうたらぬかすで無ェ
腰が抜けるまでダンシン ゴタクを並べてねェで
さあ早いとこ ダンシン・エンゼル・ツナイト
「エンゼルたァ徳も案外ロマンチストだァ」
…さて。
ライバルバンド(とうぜんじい様方で構成されている)が挑戦状を突きつけてきたため、対バン形式でライブを行うこととなった。このライバルバンドがこれまたすごいんだ。
何せ戦車に乗ってステージに登場ですから。(棺おけに足突っ込んでるどころじゃないようなメンバーもいる)
こんなやつらにジジメタル・ジャケットはどう立ち向かうのか。書いちゃうとつまらないので、単行本でご確認ください。
続編はメタルから一転、ブルース爺になります。見所は大野さんのモテっぷりですかね~。
この本の作者は泉昌之。原作の久住昌之と作画の泉晴紀からなるコンビだ。原作のくずふらい久住先生は、孤独のグルメの原作者として知ってる方も多いのでは。孤独のグルメしか知らない方には、「こういうのもあるのか」と新鮮な驚きを得ること間違いなし。
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*1:まだそんなに年をとってはいないと思うけれど…。