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阿部共実新作ショート集「死に日々」感想


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阿部共実先生の「死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々」を読みました。しかし、いかついタイトルだな。この偏執狂な繰り返しは「あべともっぽいねー」という感じでもある。

「死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々」こと通称「死に日々」は「空が灰色だから」や「ちーちゃんはちょっと足りない」の阿部共実先生の新作ショート集です。少年少女のちょっとうまくいかない日々を描いた作品11編が収録されています。阿部共実作品というと胃にズドンとくるような鬱要素が特徴ですが、心のえぐり度合いはちょっと控え目。とはいえ、前のショート集「空が灰色だから」同様に、「心がざわつく」読後感です。

第3話の「ネコネコココネコネコネネコ」のネコ好き主任はいちいち表情がかわいいし、第6話「それがだよ」の真城もツンデレかわいい。どのキャラクターも不器用ながら愛らしいじゃないか。誰だってうまくいかない日はあるけれど、精一杯生きてるよね。

なんてホロリと切ない話ばかりだと思うじゃん?

(ちょっと抑えているとはいえ)鬱い話をぶっこんで来やがりますよね。さすがあべとも、期待を裏切らない。

第4話の「がんばれメガネ」もなかなかにキツいのだけど、第9話は鈍器で殴られたような重い痛みを感じる20ページでした。なにせタイトルが「お願いだから死んでくれ」だもの。ストレートにも程がある。

簡単なあらすじ

主人公の田所は「俺は他のヤツとは違う」と信じきっている高校生。孤立しているのを気遣って話しかけてくれるクラスメイトにも(本人は意識していないようだけど)悪態をついてしまう。

そんな田所が唯一シンパシーを感じているのが、クラスメイトの佐久田。彼がペンネームを使ってwebサイトに漫画を投稿しているのを知って興味を持ったのだった。なぜなら、田所も同じサイトに漫画を投稿していたから。そこで自作を持って、学校の帰り道に佐久田に声をかけてみたのだが…。

おとなしそうな佐久田が淡々と田所を論破するシーンだけでも重いのに、希望に満ちた過去の様子をラストに持ってくるのはえぐい。佐久田視点から田所を見てみると「自分の彼女をこき下ろすイタいぼっち君(しかも漫画は下手)」だもんなぁ。うっとおしい以外の何者でもなかったのだと思う。唯一の心の拠り所(予定)を失った田所は、もう学校に行けなくなっちゃうんじゃないの…?

いやぁ…「同じような趣味を持ってるからって、勝手にシンパシー感じてテンション上げて近寄ってくるな、雑魚」みたいなことってどの世界にもあるんだろうなとヒシヒシと感じました。心がい!た!い!!

例えばちょっと著名なブログ持ちが集まった(という前提の)オフ会で「あの人知ってる!」と声をかけたものの「どちらさんです?(ブログ名を聞いて)あー読んだことないわ!」みたいな対応されたりとか(今考えただけです)。

ちーちゃんはちょっと足りない」はじわじわと心をえぐってくる作品だったけれど、こちらはサクッと心のやわいところを突いてくる感がありますね!

巻末に収録されている「1/4黒ニーソメガネ児童液」は、絵柄もメインのキャラクターも心を不安にさせる怪作だと思います!あまりにも病的なストーリーはついつい考察してしまいたくなるところですが…。久本君の目からは、突然人が真っ黒に塗りつぶされたようになったり、水玉模様で埋め尽くされたりしたように見えるのかもしれないなあ…。

さらに鬱い話を読みたい方は「空が灰色だから」も読みましょう読みましょう。自分の黒歴史が掘り起こされ、心がぐちゃぐちゃになって思わず遠い目をしてしまうような体験ができると思います!

ちなみに、特典の伊井が可愛すぎたので、有隣堂で買いました!

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このマンガがすごい! 2015

このマンガがすごい! 2015

 

「このマンガがすごい! 2015」には阿部先生のロングインタビューが載っているらしいので、あとで買ってくるつもり。「なぜあべとも作品にやたら団地が出てくるのか」という謎が解けるらしい…?

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じわじわと心を蝕んでくる恐ろしい作品です。