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『われら』感想。エヴゲーニイ・ザミャーチンによる長編ディストピア小説


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ディストピア小説の古典『われら』を読んだ。

以前から気になっていたのだけど、岩波版がしばらく絶版だったんですよね。ふと検索してみたら、講談社版が出ていたのを発見して購入。

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人間を罪から救い出す唯一の手段は、人間を自由から救い出してやることである。

『われら』は、全体主義国家の暗黒時代を描いたディストピア小説の先駆け。トランプ政権設立で突然人気が出た『1984』が出版される30年前に、ソ連の作家エヴゲーニイ・ザミャーチンによって書かれている。

目次

『われら』のあらすじ

宇宙船インテグラルの製作担当官D-503が暮らすのは、「緑の壁」におおわれた「単一国家」。

鉄道の時刻表さながらの「時間律法表」に沿って住民はスケジュールをこなし、生殖行為ですら国家に規制されている。

謎めいた女性I-330に出会うまでは、そんな生活に疑問を持たずに過ごしていたD-503だったが……。

管理社会にグッとくる(自分が過ごすのは嫌だけど)

この小説で素晴らしいのは「単一国」の様子。

名前を持たず、記号で呼ばれる人々。全面ガラス張りの建物。すべてが無機質で数値としてあらわすことができるような世界が描きだされている。

この小説は独白形式の手記として進んでいくため、最初のうちは読みにくいように感じられた。

「単一国」で使われる用語が何の説明もなしに出てくるから、そこに引っかかってしまうとページをめくる手が止まってしまうのではないかと思う。

最初は分からなくてもいい。「そういうものがあるらしい」くらいの気持ちで十分。手記が進むにつれ「単一国」の輪郭がはっきりとしてくる。

何もかもが人工的な世界での寂寥感に浸ることができるようになれば、しめたものだ。

ちなみに、Wikipediaの『われら』のページはネタバレしているから、読み終わるまで見ない方がいい。

こんな人におすすめ

伊藤計劃のいうところの「管理社会フェチ」の方にはおすすめ。

「管理社会フェチ」はファッショを含む「人間の尊厳」剥奪系ディストピア全般に対する萌えであると言える。町中に指導者の顔がたくさん貼られていたり、独裁政党のマーク(記号)がありとあらゆる場所に描かれていたり、やたらめったら同じ旗が濫立していたりすることに興奮をおぼえる。
伊藤計劃:第弐位相

心の中に、あえて暗い影を落とすことに安らぎを覚える人は『われら』を手に取ってみましょう。

わざわざ陰鬱な気分になりたくないという人はやめておきましょう。

『われら』の時代

この小説は当時のソビエト連邦(ソ連)を参考に1920年から翌年に書かれたのだという。(1922年にソビエト連邦設立)

ソ連では発表できず1927年にチェコで出版。ソ連ではペレストロイカ後の1988年になってやっと出版できた、というバックグラウンドも含めてグッとくる。ザミャーチンはソ連での出版の51年前にパリで客死しています。