心温まる、そして時々ほろ苦い。映画『深夜食堂』感想
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映画『深夜食堂』を観てきました。いやぁ、よかった。エンドロールが流れる中、心のなかに温かな気持ちがじわっと広がっていって、いつまでもその余韻に包まれていたかった。かつて経験した甘酸っぱいような、ほろ苦いようなアレコレが、脳裏に浮かんでは消えていきます。どちらかといえば、大人向けの映画でした。
『深夜食堂』の簡単なあらすじ
舞台は繁華街の路地裏にある小さな食堂。メニューは豚汁定食、ビール、酒、焼酎のみ(酒は3杯まで)。あとは、「注文してくれりゃ、あるもんなら何でも作るよ」というのがマスターの方針です。深夜0時から朝の7時まで営業するその店は、常連からは「深夜食堂」と呼ばれています。そんな深夜食堂に集うマスターと常連客の心温まる、そして時々ビターテイストな人間模様を絵描いていきます。
映画版でもマスター役の小林薫さん他、小寿々さんに竜ちゃん、忠さんやマリリンなどおなじみの常連客役はテレビシリーズから続投。もちろんお茶漬けシスターズもいるよ!いつもの店でなじみの顔が見ることができるのって、やっぱり安心する。自宅とは別に落ち着ける場所があるというのはいいものです。私もほしい。
食堂に置き忘れられていた骨壷のエピソードを軸に、「ナポリタン」「とろろご飯」「カレーライス」の3部構成で話は進みます。
最初のエピソードである「ナポリタン」では、『深夜食堂』という作品の世界観を紹介。原作やドラマを未見の人へ「こういう感じでいくよ」と引っ張っていくパートでした。
2話目の「とろろご飯」が一番良かった。
故郷で料理をほめてくれた男性に貯金を使いこまれたみちるちゃんが主人公。ホームレス状態になって無銭飲食した深夜食堂にて、「マスターの使えなくなった右手が治るまで」という条件で住み込みで働くことになります。
このパートでは、普段は言葉少ないマスターが見せるみちるちゃんへの優しさがが心に沁みる。気が利いたアドバイスをするわけでもないけれど、料理を用意してじっと話をきいてくれる。この絶妙な距離感が心地いい。
マスターの私生活がちらりと見えたのも楽しかった。てっきりお店の2階に住んでるのかと思いきや、公団っぽいところに部屋を借りてたとは。食材の買出しの様子も良い。
3話目の「カレーライス」のテーマは、震災の被災者とボランティアの関係性。
登場するのは、上司と不倫をしていた女性ボランティアと津波で奥さんを亡くした男性。東北へ復興ボランティアに来た女性を好きになった男性が、ストーカーばりに東京まで来て追い回す。良かったけれど、重かった。
店内にいたサラリーマンが「はい、その点は共有してます」とか話しながら出ていくシーンで、「東京モンは一体何を共有してんだ?」というセリフにはクスっとしてしまいました。あの坊主頭のリーマン、向井理とは気がつかなかったな。
『深夜食堂』に登場するごはん
深夜食堂に登場する食事がどれもおいしそうなんですよね。いずれもかしこまった料理ではなく、普通の人が普通に食べるごはんというのもいい。なかでもアツアツの卵焼きが実においしそうで、観ているだけでおなかが空いちゃいました。大画面で料理が大写しになるのはずるい。
存在は知っていたけれど、食べたことがない「そうめんかぼちゃ(金糸瓜)」も気になる食材です。ゆでると麺のようにほぐれるんですって。三杯酢でちゅるちゅると食べる常連さんたちの姿を見ていると「なんでここにはないの…」って悲しくなりますね。金糸瓜(キンシウリ)の旬である夏を楽しみに待ちましょうか。
『深夜食堂』の原作
安倍夜郎による同名の原作漫画は、『ビッグコミックオリジナル』で現在も連載中。現在13巻まで出ています。
テレビドラマは第3部までやってるよ。